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フィリピンの証券取引委員会(SEC)は、Memorandum Circular No. 15, Series of 2025を発行し、2026年実質的支配者(ベネフィシャル・オーナー)開示規則(以下「2026年BO規則」)を定めました。本規則は、実質的支配者の報告に関する既存の規制を統合・更新するものです。実質的支配者とは、自然人であって、契約、取決め、その他の関係を通じて、直接または間接に議決権または投資・経済的支配権を有し、または共有する者をいいます。
2026年BO規則は、マネーロンダリング対策評議会(Anti-Money Laundering Council:AMLC)の規制と整合する形で、実質的支配者の報告基準として20%の所有または支配という閾値を採用しています。
新たな枠組みの重要な特徴として、専用のデジタル「実質的支配者登録簿(Beneficial Ownership Registry)」の創設が挙げられます。これは、現在利用されている電子提出システムである Electronic Filing and Submission Tool(eFAST) を通じたBO情報の提出に代わるものです。
同登録簿の運用開始後は、一般情報シート(General Information Sheet:GIS)から実質的支配者に関する項目が削除されます。
実質的支配者の開示義務に違反した場合には、罰金が科されるなど厳しい罰則が科されます。また、虚偽の実質的支配者(BO)情報を提出した場合、最大200万ペソの罰金が科されるほか、法人登録の取消しまたは解散に至る可能性があります。
相当な注意義務(デュー・ディリジェンス)を尽くさなかった取締役、理事、役員については、個人的な罰金が科される可能性があり、虚偽申告が認められた場合には、最長5年間、会社役員としての就任が禁止されることがあります。
このように、2026年BO規則は、単なる開示義務の強化にとどまらず、フィリピンにおける企業統治およびコンプライアンス文化の在り方そのものを再定義するものといえます。SECは、企業の実質的支配構造の透明化を通じて、マネーロンダリングや不正行為の抑止を一層強化する姿勢を明確にしており、形式的な届出対応ではもはや十分とはいえません。フィリピンで事業を展開する企業、特に外国資本を含む企業においては、株主構成、支配関係、関連契約の実態を精査したうえで、社内のコンプライアンス体制およびデュー・ディリジェンス体制を早急に見直すことが強く求められます。
このような規制環境の変化が進む中、2026年は日本とフィリピンが国交正常化70周年という大きな節目を迎える年でもあります。両国は長年にわたり、投資、インフラ、人的交流、法制度協力など多岐にわたる分野で緊密な関係を築いてきました。今後予定されている記念事業や関連イベントは、日比間の経済・法務分野における協力関係をさらに深化させる重要な機会となるでしょう。日系企業にとっても、フィリピン市場における事業基盤を改めて見直し、透明性と信頼性を重視した持続可能なビジネスモデルを構築する好機であり、2026年BO規則への適切な対応は、その第一歩として位置付けられます。
